2022年04月28日

ハーバードと奴隷 ―D&Iの不都合な真実に向き合う

あらゆる組織が、ダイバーシティ&インクルージョン(DI)、そして最近はエクイティへのコミットメントを表明している。特に、ここ数年はBlack Live Mattersムーブメントの影響で、アメリカのリーダー層は、自分の組織においては全ての人種を公正に扱う旨のメッセージを、躍起と感じられるほどに発信している。

私の母校のハーバードも例外ではなく、学長をはじめとしたリーダーたちから、いかにハーバードが多様性を大切に思っているか、そのために講じている様々な施策についてのメールが卒業生宛てに頻繁に送られてくる。

ところが、昨日、ハーバードから届いたメールは、いつもと違った。ハーバードと奴隷の歴史的経緯の調査報告書ができたという連絡だったのだ。一般的には、奴隷制といえば、米国の南部で行われていたことであり、ハーバードが所在するマサチューセッツ州などの北部の地域は、南北戦争を通じて奴隷解放をした側だったと認識されている。が、その北部も、そしてハーバードも、実は奴隷に深く関わってきたという事実に目を向けようというのが調査報告の趣旨だ。

報告書には、今日の感覚からするととても受け入れ難い黒人や先住民に対する慣行が赤裸々に記述されている。奴隷たち、そして奴隷を搾取していた白人たちの個人名も出てきて、リアリティさが増す。これを読んで気がめいってしまったときのメンタルサポートの窓口がメールに掲載されているほどである。

報告書は約130頁にも渡り、私自身、全てを読み切れていないが、サマリーをさらに要約すると、ハーバードは次の点で奴隷制の責任を負っているとしている。

  • 70人以上におよぶ奴隷の使用
  • 奴隷制で財を成した人からの寄付金の授与
  • 奴隷撲滅運動の抑止
  • 「人種科学」の名のもとに行われた虐待的な「研究」
  • 奴隷制廃止後にも続いた人種隔離、排除、差別などの慣行 

この報告書(Report of the Presidential Committee on Harvard & the Legacy of Slavery)はネットから誰でも閲覧できるし、SNSの拡散ボタンまで付いている。

なぜ、ハーバードはこのような不都合な事実を調べ、恥さらしを厭わず情報公開と発信まで行うのか。

その理由について、ハーバードからのメールにはこう綴られている。

Veritas(ギリシャ語で、「真理の探求」を意味する)をモットーとする学術機関の一員として、ハーバード大学の今日の強みが、人間の隷属と、それを根付かせるシステム(ビジネスを含む)の上に築かれたことを認め、理解することは、私たちに課せられた責務です。私たちが過去の悲劇的な過ちから学ぶことができるのは、真実とともに、また真実を通じてのみなのです。

 (ハーバードのVeritasのロゴ)

veritas.png

報告書は、歴史を振り返るだけではなく、今日の課題として、黒人の学生は、ハーバードの教育へのアクセスを得たものの、キャンパスで孤立感を感じることがあり、インクルージョンの改善が必要であることにも触れている。また、最終章では、今後に向けた7つの提言で締めくくっている。

これまで、あちらこちらから送られてきた美辞麗句に溢れたDIのメッセージのどれよりも、今回のメールは強いインパクトがあった。米国における奴隷制など、過去のことであり、海外の話であると退けがちだが、黒人や先住民を踏みにじることで繁栄したキャンパスで自分は学んだことを突き付けられた。そして、ハーバードの、DEIDiversity, Equity & Inclusion)への本気度を思い知った。

日本企業のほとんどが、ダイバーシティ推進を表明している。していない企業を見つけるのが難しいくらいだ。そして、その表明文は、お決まり文句のごとく、似たようなものばかりである。「右に倣え」ということでダイバーシティ推進を掲げている企業が少なくないのだろうと思わざるをえない。そんなことだから、某牛丼屋の役員の失言のような、目を覆いたくなるようなことも起きたりするのか。

本気でやるなら、日本の社会やビジネスにおいて、ダイバーシティが妨げられてきた歴史の責任は自分たちにもあることを認め、組織内の過去の慣行を振り返り反省することから始めてはどうだろうか。

 



posted by ルークブログ at 10:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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