2017年11月30日

2度目のシリア難民キャンプ訪問記

子供たち.bmp (c)JEN

JENの代表理事として、ヨルダンにあるシリア難民のキャンプ(ザアタリ難民キャンプ)を4年ぶりに訪問した。2013年に訪れたときは、シリアから逃げてきたばかりの人たちが多く、そこで感じたのは憤りや怒りだった。自国民を虐殺するアサド政権と、そのアサド政権を野放しにしておく国際社会に対して憤りや怒りである。
シリアが内戦に入って6年がたった今、人々はその現実を静かに受け入れているようだ。意外にも難民キャンプの中では、多くの笑顔が見られ、女性は着飾り、子供たちは「ハロー」と声をかけてくる。基本的には難民の人たちがいかに普通の暮らしを求めているかを肌で感じる。

最盛期には10万人以上がいたザアタリ難民キャンプだが、今は約8万人となった。そして、国連や支援団体によって、少しずつキャンプ内の生活環境が改善されているし、難民たち自身も自分たちでできる限りの工夫を凝らしている。

おうち.JPG 中庭.JPG

訪問したこちらの「お家」(といっても6畳一間の小屋)では、素敵な中庭があった。
住民の男性は父子家庭なのだが、子供3人を抱えてシリアの村から村へと逃げ回りながら、3年前にザアタリ難民キャンプに辿り着いたと言う。

お父さん2.jpg

難民の中でもそれなりに格差があり、彼は「脆弱な層」に当たるそうである。JENでは、特に脆弱な層に目を向け、取り残されないように支援しているが、過度な支援は依存心が高まり自尊心が失われるので、難民が互いに助け合う仕組みや土壌を作ることに注力している。彼は、シリアでは石膏大工だったそうで、そのスキルを活かして、「より脆弱な層」の小屋の修理を手掛けている。つまり、彼は「人を助ける」ことで自尊心が強まり、そして「より脆弱な層」の人は助かるというWin-Winの効果が得られる。
彼は、故郷を想う気持ちは強いが、シリアに戻る気にはなれないと言う。「自分がシリアを逃げ出したあと、自分の兄弟たちが殺された。戻ったら自分も命を狙われるのではないかと思う」というのだ。
話を聞いている間、彼は私たちにお茶をふるまってくれた。アラブの人はものすごくホスピタリティがあり、自分が難民の立場でも客人には茶をふるまいたいというわけだ。そして、最後に「JENさん、どうかこの難民キャンプにずっと居てください」と言った。泣ける。

次に訪れた「お家」は、「恵まれた(??)層」だった。
お母さん.jpg

本当はルール違反らしいが、他の世帯から小屋を買って、くっ付け、1DKのお家に仕立てた。ただし、子供4人の6人家族である。6人が6畳のベッドルームに寝るのだから、狭すぎることには変わりない。
この6人家族は2012年にこの難民キャンプに来た。しかし、あまりの生活環境の悪さにキャンプを出て、ヨルダンの南部のほうに移り住んでいたという。確かに2013年に自分が訪れたときでも、キャンプ内にトイレは100人に1つしかなく、ほとんどが壊れているという状況だったのだから無理もない。やがて、貯金がどんどん減っていく一方で、キャンプ内の環境はだいぶ改善したという噂を聞いて、2年前にキャンプに戻ってきたという。
こちらのお家では、コーヒーをふるまわれただけでなく、「ランチを食べていきなさい」と言われた。しかし、「支援団体が難民にご馳走してもらってはいけない」という国連のルールがあるため、残念ながら断るしかなかった。
お母さんは、JENが主催する衛生促進プロジェクトに参画しており、「コミュニティ衛生プロモーター」として、キャンプ内の啓発活動に取り組んでいる。キャンプの環境はだいぶ改善したとはいえ、汚水・排水が溢れたりして、清潔には程遠い。小屋は密集しているので、病気の蔓延は速い。衛生教育が欠かせないのである。
常駐しているJENの日本人職員によると、このお母さんは大活躍しているそうであるが、シリアにいたときは、専業主婦でいつも家にいて、コミュニティ活動をしたり、人前で話したりしたことはなかったという。なので、コミュニティ衛生プロモーターになるべく手を挙げるには、かなりの勇気がいったそうだ。ちなみにこの仕事はボランティアで、お金はもらえない。それでもなぜ手を挙げたのかと聞くと、「少しでも人の役に立ちたかったから」と答えた。

難民の支援のためには、こうした直接的な支援だけではなく、ホスト国(=ヨルダン)への支援も極めて重要だ。ヨルダンの人口は945万人であり、人口の約1割にあたる数のシリア難民を受け入れている。ヨルダンにいる難民のうち難民キャンプにいるのは12%だけで、それ以外はアンマン市内やヨルダンの各地に流入している。ヨルダンの社会的負担たるや限界に来ていることが危惧される。
実際、ある中流階級のヨルダン人のお家にお邪魔したとき、その家族の人たちが口々に不満を語った。「シリア難民がたくさん来たので、仕事が奪われているし、物価や家賃が上昇している」と言うのだ。
このような不満を軽減し、「シリア難民を受け入れてよかった」と少しでも思ってもらうために、国際機関やNGOはヨルダン人にもメリットがあるような支援活動を展開している。JENが取り組んでいるのは、ヨルダン全域の学校に対する教室の増築や水衛生施設の増築・改修、そして衛生教育の促進だ。

学校.jpg (C)JEN

アンマン市郊外の男子校と女子校を訪問したが、狭い教室に多くの生徒が詰め込まれ、肩と肩がくっつく距離で座っている。これでは病気の伝染はあっという間だ。そこにシリア難民の子供も加わるのでパンクする。そこで、2交代制をとっている学校もある。
女子校では、廊下や教室は、女子校らしく可愛い絵やポスターが壁に貼られていて、教室はきれいだったが、生徒用のトイレを覗いたら、あっと驚く汚さだった。これでは、難民キャンプのほうがましかもしれない。この学校では、JENによる衛生教育がこれから始まるところということで、次にまた訪問することがあったら、衛生教育の効果でトイレがキレイになっていることを期待したい。

それにしても、ヨルダン人の子供たちも人懐っこい。「ハロー」と声をかけてくるし、遠くにいる子たちは手を振ってくれる。

テロは絶えず、国際情勢も益々不安定化しており、こうした支援活動に終わりは見えない。しかし、たまたま難民となったシリアの人たちと、それを受け入れたヨルダンの人たちと、日本との草の根レベルの交流が行われることで、日本との絆が少しでも生まれることが、まわりまわって日本の国益にもつながるはずだということを、子供たちの笑顔に見てとれる。何しろ、欧米ブランドや韓国ブランドは多く見かけるのに、日本車が多少走っている以外は、ビジネス上の日本のプレゼンスは全く見られず、支援活動が彼らと日本の接点なのだから。

難民のため、日本の国益のために、ご寄付のご協力いただけたら嬉しいです。
http://www.jen-npo.org/jp/contribute/index.php
posted by ルークブログ at 03:12| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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